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自己啓発

【第8回】 人から好かれる人は、健康を維持する可能性が高い!?

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photo by Ryan McGuire
2018.9.12
From 高田明和

「正直に生きる人が健康か」ということを調べるのは困難でしょう。しかし、正直に生きた結果、人々に好かれ、サポートを受けることが健康で幸せな人生につながるかは調べられます。

前に述べたグラント研究で、75歳で身体的に健康な人はどのような人かが調べられました。もちろん、喫煙しない、アルコールを過飲しない、ある程度の運動を欠かさない、安定した人間関係を保つということが大事ですが、周囲の人に好まれ、支持されるということが非常に大事だということも分かりました。

喫煙、過飲、不幸な結婚、運動をしないという生活を「悪い習慣」と名付けると、50歳でこのような悪い習慣がなく、しかも、周囲の人に好かれ、支持される人の75%が、75歳で「健康で幸せ」と回答しました。

このような悪い習慣がないけれど、周囲とうまくやってゆけない人、周囲の支持がない人の場合、75歳で「健康で幸せ」と回答した人の率は64%でした。

では、悪い習慣のある人の場合はどうでしょうか? たとえば50歳時にヘビースモーカーでも、周囲からの支持がある場合は、58%の人が75歳で「健康で幸せ」と答えました。ところが、同じヘビースモーカーでも周囲からの支持のない人、つまりまわりからあまり好かれていない人の場合は、75歳で「健康で幸せ」と答えた人は39%にすぎませんでした。

つまり人柄というものが明らかに健康や幸せに関係しているのです。

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もちろん、人に好かれるのは正直な人だけというわけではないでしょう。しかし、長い目で見ると、人は正直な人と付き合うことを好みます。

ここで注目したいのは、この研究の対象者のようにハーバード大学出身で、知能指数も高く、50歳でかなりの地位にある人たちでも、晩年に健康で幸せとはいえないということです。


では中国の哲人はなんと言っているのでしょう。

『菜根譚』には「事業を成功させ、功績を立てる人は素直で機転の利く人だ。機会を逃すのはものごとに囚われる人だ」と述べています。

正直というのは重要な生き方ですが、同時に、とらわれずにあっさりしていることも大事です。正直であるということにとらわれ、正直でない人を排除しようとすると、まさに「水清くして魚住まず」になってしまいます。

正直が大事なのは人との関係においてです。人は見ているのです。私はいつも親しい人に言っているのですが、社会は見ているのです。正直な人がどのように行動するかを見ているのです。

あまりに正直さにこだわりすぎ、そうでない人を非難するようなことがあってはならないのです。そのような生き方をすると社会の支持を失います。すると、健康と幸せが訪れないのです。

正直さは大事ですが、徳の一つである、あるいは徳の一つに過ぎないということを忘れてはなりません。

もっとも大事なのは、正直に生きて、それが周囲の人に認められ、人から好まれる人物になるということです。

正直そのものが人生の目的ではないということを理解していただきたいと思います。もっとも大事なことは『四聖諦』でも述べられているように、とらわれない、欲望を減らすということです。

そのための多くの行い、道の一つが「正直である」ということを忘れてはなりません。

 

 

 

 

高田明和(たかだ・あきかず)

浜松医科大学名誉教授/医学博士
1935年、静岡県清水市生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。ニューヨーク州立大学大学院教授、浜松医科大学教授を経て、現在にいたる。テレビ、ラジオ、全国の講演を通じて、心と身体の健康に関する幅広い啓蒙活動を積極的に行っている。主な著書に『100歳までボケない脳に変わる! 速聴CDブック』(きこ書房)、『長生きしたけりゃ、医者の言いなりになるな』(朝日新聞出版)、『うつもボケも寄せつけない脳と心がホッとする健康学』(すばる舎)ほか多数。

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