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自己啓発

【第10回】 価値観が近い人と人生をともにする

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photo by Ryan McGuire
2018.9.27
From 高田明和

この世には正直を大切だと思う人もいますし、それよりも時に嘘を言っても結果がうまくゆけばよいと思う人もいます。

現在のような価値観が多様化している社会では、結婚相手や子ども、仕事や遊び仲間の価値観が近いことが非常に大事です。最近、私の周囲でも価値観の違いで人間関係がうまくゆかなくなった人が多くみられるようになりました。

私の親しい友人のKさんは、祖父も父君も財界の大立者でした。ところが本人は高校時代から学生運動のようなことをやり、勉強をおろそかにしたので、一族はほとんど東大出身のなか、あまり有名ではない私立大学に進学しました。

就職の際、父親は3つくらいの一流会社をあげ、ここならお前を入れられると言ったということです。ところが本人は会社に入ってからも組合運動ばかりしていたので、父君が怒り、勘当のようになってしまいました。

彼が四国の支社にいたとき、大阪大学の医学部から連絡が入り、「あなたのお父さんは死の床にいます。親族のことを尋ねたのですが、自分には息子はいない、と言っていました。しかし、やっとあなたを探し当てたので、会っていただけませんか」と言ったということです。

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逆の例もあります。

慶應義塾大学の先輩のA教授に、あるとき学会で一緒だったので、お子さんはどのようにしていらっしゃいますか、と聞いたのです。すると「昔、息子と口論をしたときに、あまりに生意気なことを言うので、そんなことを言うなら自分で生きてみろ、と言ったら、息子は、そうですか、と言って家を出たきり帰って来ない。必死に探したのだが、行方がどうしても分からなかった。ある日、息子の友人から電話があり『息子さんはアングラ映画をやっている。元気だと伝えてくださいと言っている』と。その後も探したけれど、やはり行方は分からなかった」。

その後、今度は次男がフリーターになってしまいました。奥さんも医者だったのですが、「ばかばかしくなった」と医者をやめてしまったそうです。

このような争いは夫婦の間でも起こります。私の知り合いの女性は非常に野心的で、夫が社会的に活躍しないということに不満をもっていました。一方、夫の方は「そんなに焦る必要はない、のんびりやるべきだ」という考えです。仕事に就いている時には、ほとんど家にいないので、価値観などは問題にならなかったのですが、定年後、毎日顔を合わせるようになると、彼女は耐えられなくなり、別居しています。

正直な人が世間的に成功するとも言えないので、正直さよりも世間的な成功、裕福さ、地位などを大切にする人にとっては、「あの人はバカ正直だ」と嫌うこともあります。

しかし、正直さは長い目で見ると世間的な成功につながることもあるのです。定年後に周囲の人から頼まれて、ボランティア活動のまとめ役や市町村の長との折衝役を任されるということがしばしばみられます。この場合「あの人なら任せておいても大丈夫だ」、「あの人は陰で悪いことなどできる人ではない」という評判が、この人を尊敬されるべき地位に就かせるのです。

ですから、長い目で付き合うことが大事で、それには価値観の同じ人たちのサポートが必要なのです。

 

 

 

 

高田明和(たかだ・あきかず)

浜松医科大学名誉教授/医学博士
1935年、静岡県清水市生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。ニューヨーク州立大学大学院教授、浜松医科大学教授を経て、現在にいたる。テレビ、ラジオ、全国の講演を通じて、心と身体の健康に関する幅広い啓蒙活動を積極的に行っている。主な著書に『100歳までボケない脳に変わる! 速聴CDブック』(きこ書房)、『長生きしたけりゃ、医者の言いなりになるな』(朝日新聞出版)、『うつもボケも寄せつけない脳と心がホッとする健康学』(すばる舎)ほか多数。

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