仕事でもっと稼いで経済的に何不自由ない身分になりたい、とほとんどの人が思っているのではないでしょうか。そうであるなら、収入とその増やし方についての正しい考え方は、ぜひ身につけるべきでしょう。
私はよく、セミナーの冒頭でこう問いかけます。「皆さんの最大の資産は何ですか?」
聴衆はいつも、ちょっと考えてから口々に「マイホームです」「銀行口座です」「経営する会社です」などと答えます。
そこで私は、皆さんの最大の資産は実は「稼ぐ脳力」です、と種明かしをします。いいかえれば、人が報酬を払ってくれるような成果を上げる脳力です。
人生、自分には何の落ち度もないのに全財産を失ってしまうこともないとはいえませんが、稼ぐ脳力さえあればまた労働市場へ復帰し、失った財産相当分を稼ぎ出すことができます。多くの成功者は、実際にそういう経験をしています。
稼ぐ脳力とは、自分のこれまでの人生や仕事で蓄積してきた知識、スキル、経験、学習、努力、成果などの総体です。生まれてこのかた積み重ねてきたものです。
自己啓発
あなたの最大の資産は何ですか?
photo by Berklee Valencia Campus Visiting Artists: FORQ via photopin (license)
2018.5.18
From ブライアン・トレーシー
自分の資産価値
稼ぐ脳力も資産の一種なので、時とともに価値が上がることもあれば下がることもあります。コンスタントに知識やスキルをアップグレードし、人が高く評価してくれ喜んで対価を払ってくれるような仕事をたくさんやっていれば、自分の資産価値はアップしていきます。
反面、勉強やハードワークを通じてコンスタントに知識やスキルをアップグレードする努力を怠っていれば、稼ぐ脳力は「減価償却」していきます。いずれにせよ、景気は目まぐるしく変動し、新たなスキル需要もたえず発生するため、稼ぐ脳力の資産価値もたえず変動することになります。
シカゴ大学で教鞭をとっていたノーベル賞経済学者ゲーリー・ベッカーによれば、いまの社会には「所得格差」はない、あるのは「スキル格差」だけだといいます。高需要スキルの持ち主は常にひっぱりだこで、高報酬の仕事にありつける。高需要スキルとは、自社の製品やサービスの製造・販売増、ひいては利益増につながるような成果を出せるスキルのことです。
スキルも時代遅れになる
これに対して時代遅れのスキル、つまりもはや需要のないスキルしかもっていない人は、何カ月も、場合によっては何年も失業しつづけることにもなりかねないということです。
ベッカーによれば、被雇用者のトップ20%=所得の年平均伸び率11%の層と、底辺80%=所得の年平均伸び率3%以下の層との最大の違いは、たえず学びつづける意欲があるかないかなのです。
高額所得者はコンスタントに読み、学び、スキルアップに励んでいます。
「超一流」パフォーマー研究のパイオニア、アンダース・エリクソンによれば、たいていの人は就職して最初の1年間は仕事を覚えようと努力します。クビになりたくないからです。しかし最初の1年を過ぎると、それ以上は成長も改善もしなくなる。就職して10年たっても、生産性は就職1年後と変わらない。このことは現代のビジネスパーソンの80%にあてはまるといいます。
生涯学習派
by reynermedia Numbers And Finance via photopin (license)
トップ20%層は、生涯学習派です。
たえず知識やスキルのレパートリーを増やしつづける人たちです。新たなアイデアを読み、身につけ、実践する。常に自分自身に、向上せよ、成長せよとプレッシャーをかけつづける。
あるフォーチュン500社のCEOが最近、こう語っていました。
「我が社の持続可能な競争優位の源泉はただひとつ、ライバル各社に先駆けて新たなアイデアを学び、実践する脳力である」
この言葉は、企業だけでなく個人にもあてはまります。個人が持続可能な競争優位、つまり人材としての高い資産価値と高報酬をキープするためには、新たな高需要スキルを身につけ実践し、質量両面でよりハイレベルな結果を出す脳力が必要です。
エリクソンの調査によれば、どこの業界でも、高パフォーマーは低パフォーマーよりもはるかに多くの時間をスキルアップに費やしています。
現代社会にみられる著しい所得格差のほとんどは、実はこうしたスキルアップ格差から生じているのです。
自分にとって最重要なスキルを見きわめよう
エリクソンが調査対象に選んだのは、大企業の幹部社員たちです。
大企業に入社し、長年かけて経営ポストへ昇進し、人によってはCEOや社長にまでのぼりつめ、自社の社員の平均年収の301倍(2016年調べ)もの年収を稼ぐようになった人たち。
調査の結果、対象者のほとんどが就職以来ずっと、あるシンプルな戦略を実践しつづけてきたことがわかりました。
彼らは入社するとすぐ、上司のところへ行ってこう尋ねます。「私が職場でもっと貢献できるようになるために、何かひとつスキルを磨くとしたら何でしょうか?」
そう聞かれた上司は、マーケティング、チームビルディング、プレゼンテーション、財務諸表の読み方などを挙げ、このスキルを磨けば、きみはもっともっといい仕事ができ、もっと社に貢献できる人材になるだろうと言います。
言われた新入社員の方は、まるで投げられた棒を追っかけてキャッチする犬のように上司のアドバイスにとびつき、ただちに教えられたスキルの向上にとりかかります。
スキル習得をゴールに据え、学習計画を立てる。習得に向けてやるべきことを並べたリストを作る。読むべき本や、受講すべきコースやワークショップや、出勤途中に聴くべきオーディオプログラムを探し出すのです。
ブライアン・トレーシー
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1944年カナダ・プリンスエドワード島出身。 |