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自己啓発

【第4回】 「正直」に関するブッダの教え

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photo by Ryan McGuire
2018.8.8
From 高田明和

私はブッダの教えを世界最高の教えで、まったく間違いがないものだと思っています。

お経を唱える時に最初に唱える「開経偈」(かいきょうげ)には次のように書いてあります。

無上甚深微妙法
百千万劫難遭遇
我今見聞得受持
願今如来真実義

むみょうじんじんみみょうのほうは
ひゃくせんまんごうにも あいおうことかたし
われいまけんもんし じゅじすることをえたり
ねがわくは にょらいしんじつのぎをげせん


「劫」というのは長い時間のことです。「四十里四方の大石を、いわゆる天人の羽衣で百年に一度払い、その大きな石が摩滅して」なくなってしまうまでの時間です。

この劫が百千万集まったというのですから、まさに無限の時間です。この時間を経ても、仏のお言葉に出会うのは難しい、ところが今、ブッダの経を聴聞することができた。ぜひ、真実のお言葉を聞かせてください、という意味です。

辻雙明老師は、この言葉を本当に正しいと思うと言っていますが、私もそのように思えます。実際、このような宇宙の本質を衝く法則をどうして見出すことができたか不思議でなりません。

さて、ブッダが見出した宇宙を支配する法則を三法印と言います。

1:諸行無常
諸行というのはすべての行いという意味ではありません。物事にはすべて動きがあります。それを強調した言葉で、すべてのことは常でない、絶え間なく変化しているということです。

これは物理学の世界では常識になっています。原子、分子の世界、さらにそれを構成している素粒子は絶え間なく変化を繰り返していることが確かめられています。

2:諸法無我
ここでいう法とは「決まり」という意味ではありません。すべての物事は法則によって動くので、法と言われているだけで、この世には私のものというものはなく、すべては因縁によって決まっているということです。

3:涅槃寂静
大乗仏教では涅槃寂静と言い、このように変化する中で、本来の心だけは永遠であるということです。


「正直」が関係するのは「善因善果」とか「積善の家に余慶あり」という言葉でしょう。よいことをすればよいことが来るという教えです。

私たちが何かをする、何かを考える、何かを言うと、それは宇宙の貯金通帳のような業(ごう)に蓄えられるのです。よいこと、つまり他人に親切にしたり、人の心を傷つけないようにすれば、業の貯金が増えます。これを善業と言います。善業が多くなれば、幸運に恵まれると考えます。一方悪いことをすれば悪業と言って、借金になります。悪業が貯まればもちろん不運になり、成功しません。

善業を増やすことを「徳を積む」といいます。とくに、人知れずよいことをすることを「陰徳」と言い、仏教ではとくに大切に考えます。また、悪業を増やすようなことをすることを「徳を損なう」と言います。徳を損なえば不幸になるのは当然です。また、徳を損なうことを「不陰徳をする」とも言うのです。

中国の修養書である菜根譚には「徳は事業の基(おと)なり。いまだ、基の方から図して、棟宇(建物)の堅久(堅固)なるものはあらず」として、徳を積むことを勧めているのです。

 

 

 

 

高田明和(たかだ・あきかず)

浜松医科大学名誉教授/医学博士
1935年、静岡県清水市生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。ニューヨーク州立大学大学院教授、浜松医科大学教授を経て、現在にいたる。テレビ、ラジオ、全国の講演を通じて、心と身体の健康に関する幅広い啓蒙活動を積極的に行っている。主な著書に『100歳までボケない脳に変わる! 速聴CDブック』(きこ書房)、『長生きしたけりゃ、医者の言いなりになるな』(朝日新聞出版)、『うつもボケも寄せつけない脳と心がホッとする健康学』(すばる舎)ほか多数。

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