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Power of Encouragement -激励力-

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Photo by Geomangio
2019.5.28
From マックス桐島

「激励」と一言で言ってもさまざまな形がありますよね。

時として、友人や伴侶、恋人からの勇気溢れる真っ直ぐな表現が、自分よがりの限られた発想に基づく方向性を修正してくれることもあります。そんな言葉で僕自身が救われたのは、とある寒い朝のことでした。

若い頃の僕はけっこうな野心家でした。夢を叶えたい一心で、映画界で大成功した人の手段や態度、ビジネスモデルを模倣しては、我慢強さや粘り強さをまったく欠く自分よがりの道を突き進んでいました。

数作品を製作するようになった40代の頃、撮影や映画祭で世界中を駆け回るようになり、「夢を実現した!」、「成功者の仲間入りを果たした!」という実感を感じるようになったのです。

ところが、数年間も映画製作のチャンスから遠ざかる停滞期、いわゆる「キャリア・スランプ」に陥り、自己意識やビジネス的な自信も低下していきました。結果の出せない自分=Nothing、つまり役立たずなのだという意識にさいなまれ、将来性や今後のキャリア展望など不可能な状況にさえ思えました。

気分転換にと友人と飲み歩いたり、一番大切なワイフに八つ当たりしたりと、少々自暴自棄になりつつありました。今から思えば情けない話ですが、“打たれ弱い自分”がそこにはいました。その貧相極まりない境涯を救ってくれたのは、ほかならぬ最愛のワイフでした。

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Photo by Dicktay2000

ロサンゼルスにしては寒いその朝、なにかを決意したかのようなオーラで彼女は僕の前に座りました。助言や小言を受け止める心の余裕などまったくなかった僕は、伏し目がちに朝食を食べ始めました。

声を荒げるでもなく、落ち着いた表情と声のトーンで、彼女は静かにこう言いました。

「マックス、あなた最近“普通の人”ね……」

「普通の人!」、英語で言う「Ordinary!」の響きが僕の心の襞の奥深くに突き刺さり、ボーッとした心身を洗い清めるがごとく、一日中心から離れませんでした。

数年前は、飛ぶ鳥を落とす勢いでAmerican Dreamを全速力で追いかけていた僕は、今は昔の自分の屍のようになって、挫折を世間や周囲のせいにして逃げ回っている……。

その晩、僕は自分にこう問いかけました。

「おまえ、なにやってんだ?」

英知と学びの多くは、心を開いたときに訪れます。ワイフの短くも強烈な言葉が、“暗い部屋で毛布にくるまっていじけていた”僕の心を揺さぶり、鳥肌がたつほどの気づきをくれたのです。

「人生がカーブ(想定外の難関)を投げつけてきたからなんなんだ。世界中には挫折にめげずに再起する人が大勢いるじゃないか。普通の考えでは普通のことしかできない」

“Victim(犠牲者)”感情で沈んでいた僕は、その日以来暗いトンネルを抜け出し、企画が通らない理由を掘り下げて再構築して、新たな気持ちでスタジオや配給会社へのプレゼン攻勢を開始しました。

「人や状況のせいにする」、「言い訳を並べる」、「打開策を講じない」といった“自分を上昇気流に乗せてくれない”Victimエネルギーを発散していたのとは打って変わって、「自分の人生や境涯をシフトさせるのは自分の責任」というWinner(勝利者)認識に目覚めたのでした。

あの日の“自分改革”がなかったら、映画製作も、日本での作家活動も、想いを形にすることはできなかったと思います。人生の大きな転換のチャンスは、日常の会話の中、大切な人からのメッセージの中に潜んでいるのですね。

今でもあの日の彼女の言葉を思い出します。静かな中にも“Insight”が秘められた愛情と激励のメッセージ。これからも「Extraordinary(普通じゃない)」な人間を目指して、志半ばで逝った愛する人の分まで輝いて行こう! そう思っています。

Miss you honey. R.I.P.(合掌)

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